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47歳からの心理学学習帖

東京未来大学モチベーション行動科学通信課程に在籍する47歳おっさんの学習記録

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」 つかこうへい 熱海殺人事件

 

売春捜査官―熱海殺人事件

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 つかこうへいは、昭和50年代から平成初期にかけて活躍した劇作家・演出家です。昭和49年、「熱海殺人事件」で岸田國士戯曲賞を受賞。他の代表作には、「ストリッパー物語」、「いつも心に太陽を」、「蒲田行進曲」などの作品があります。また、小説家として「蒲田行進曲」で、直木賞を受賞。この作品は、深作欣二監督により映画化され、つか自身が脚本を手がけました。映画史に残る名作です。

 劇作家、演出家としての彼の手法は「口立て」と呼ばれ、同時代に活躍した唐十郎野田秀樹らとも異なる独自の手法を持っています。唐十郎はその手法を「特権的舌格」と評し、その一端を次のように書いています。

 「彼は稽古場で台本に頼らない。この役者はどう生きてきたのか、どんな声を出し、どんな肉体言語を持って生きてきたのかを探りあてようとします。そしてそれらの問いを役者へぶつけながら、台詞をつくってきたといいます。」(『彼もまた特権的なる・・・』)。

 唐が指し示していることは、次のような、つか自身の言葉でも確認できる。

 「演出家は、第一に、戯曲の意図するものより、役者の魅力を引っぱり出すということに徹底しなければなりません。」(『戯曲より役者』)。

 「芝居は作家が書けるのは四割くらいのものであとの六割は役者に書かせてもらうのだと思っています。」(『わが街わが友』)。

 俳優との対峙を創造の根本に置くこのような手法は、代表作の「熱海殺人事件」のヴァリアントの多さにも表れている。初期には、初老で、くわえ煙草をトレードマークとした部長刑事は、後の作品では、バイセクシャルで元棒高跳びの選手、あるいは母殺しのサイコパスなど、演じる俳優により変化する。俳優によって、台詞はもちろん、役柄や場面設定まで大胆に書き換える。

 俳優の魅力を最大限引き出そうとする意図は、同時に、舞台で演じる俳優の演技の一回性へのこだわりとも切り離せない。演技の一回性とは、昨日と今日とでは、同じタイトルで同じ俳優が演じるものであっても、観客が目にするものは違うことを指す。

 「私の表現は、一人の人間に、どのような状況下で、どのような台詞を喋らせたら一番リアリティがあるのか、を第一としている。そしてそれが一回性であるからなお、いとしく思いをはせられる。」(『空間をねじまげる』)。

 つかは、「今、ここ」で懸命に生きる姿を俳優に求め、俳優が躍動する舞台を観客に提示し続けた。モチベーションを、人を突き動かす力と呼ぶなら、つかのモチベーションは人と人との関係に生じるリアリティだった。それが残酷であろうが、無残であろうが、人はハッピーエンドを求めるとつかは舞台で表現し続けたのです。

 

 

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