コーチングとコーチング心理学
何年か前に、管理職研修として、コーチング研修を受けたことがあります。コーチングとはなんぞやから始まって、一通りの基本的な内容は含まれていましたし、集中研修が終わってからも、電話でのフォローがありました。
実際に、当時のメンバーからの評価、フィードバックがあったりもしました。
管理職研修なので、上司としてのマネジメント力を鍛えるというのが眼目ではあったと思います。
その時の経験がどれくらい、今、身についているのだろうかと振り返ると、正直、よくわかりません。
周りを見ても、マネジメントの上手な人がコーチングを駆使しているのかというと、どうもそうとは思えないということもあります。
そうと思えないというのは、私自身がコーチングというのを今ひとつ実践はおろか、理解すらできていないため、なのかもしれません。
コーチングって、なんかうさんくさい・・・と感じたことはないでしょうか?
やたらめっぽう「資格」があるし、研修はやたら高いし、自己啓発セミナーのにおいがするし、と、距離を置きたい気になります。
一方で、上記に書いた社内研修での経験からそのスキルじたいは役に立つだろうし、面白いとは認識しています。
ただし、研修での経験があるがゆえに、それ以上、コーチングに触れたいと思うことはこれまでありませんでした。
ところで、「コーチング」は大学のホームページにも紹介されていますが、
モチベーション行動科学部の必須科目です。
正直、今さら感がありました。
コーチングって、ビジネススキルでしょ!?
なんで、カリキュラムに入っているのか・・・しかも、必須で。
というような、あまりポジティブとはいえないところに、
つい最近出版された「コーチング心理学概論」という本を読みました。
率直に、コーチングって面白い。
この本を読んでわかりましたが、「うさんくさい」という感じもあながち、間違いではないということがわかりました。
実際、過去の経緯では、自己啓発セミナーの集客コンテンツとして利用されたり、
あるいは、この本ではなく、ネットで検索したら出てきたことですが、マルチ商法のスキルとしても活用されていたようです。
それだけに、国際コーチ連盟をはじめ、コーチングに携わる方々による、コーチングについての理解と普及への並々ならぬ努力も、この本から窺うことができました。
さらに、コーチングは、優秀なコーチの方々の実践による経験の積み上げであるため、科学的な実証性や理論的な基盤づくりに着手されたのは、21世紀に入ってからのようです。コーチング心理学が体系的に整理されてくるのも、これからのようです。
他にも、心理療法やカウンセリングとの違いやコーチングの核となるスキル、モデル、また、心理学的系譜についても書かれています。
特に、心理学的系譜については、今流行りのアドラーに源流をもとめ、マズロー、ロジャーズと続く、人間性心理学に影響を受けているということ、また、技法についてはエリスの論理療法が取り入れられているという点に興味を持ちました。
しかし、それ以上にポジティブ心理学との関連についての指摘は、個人的には非常に関心を持ちました。
ポジティブ心理学がコーチングの理論的・実証的な基盤となりうる。セリグマンが示唆しているようです。
心理療法には臨床心理学があり、カウンセリングにはカウンセリング心理学があるように、コーチングにはコーチング心理学がある。
そして、コーチング心理学がポジティブ心理学と共に、21世紀の心理学の潮流になっていくのかもしれませんね。