心理学は日常で使うからこそ意味がある
幸福を目指す対人社会心理学―対人コミュニケーションと対人関係の科学
- 作者: 大坊郁夫
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2012/02
- メディア: 単行本
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アドラーの語り調の文体
ここ、ずっと、アドラーはkindleで読んでいます。で、気づいたのですが、アドラーの文体は語り口調なんですね。
試しに関西弁で訳してみたら、ピッタリきた。関西弁でなくても構わないのですが、より日常的な言葉でアドラーが読めれば、それがアドラーを学ぶのに1番良いと思われる。
共同体感覚も、社会への関心や感覚の共有と文脈に即して訳し分けても全然構わない。
器官劣等性も、身体の具合がよくないとか、劣等や優性にこだわる必要はほとんどありません。
よく外国語の翻訳は、日本語になっていない、とか、難しい漢字ばかりだという話を聞くことがありますが、もともと漢字文化圏のため、概念を表そうとするとほぼ漢字での表現になる。これは悪いことではないのですが、時に、今までなかった新語が作り出されることもあります。
脱構築も、日本語の表現としては、説明されないとよくわからない。その説明を理解するのにも時間がかかる。
こうした、意味の把握に時間がかかる言葉は、30年ほど前、批評、思想が語られる場面でよく見かけました。
言説。
書字。
多くの証言からアドラーは平易な言葉で聴衆に語りかけていた、という点は、もっと重視される必要があると思います。
アドラー心理学の拡がりについて
岩井俊憲さんの著書リストを見ても、アドラー心理学は、臨床カウンセリング、子育て、ビジネス、男女関係と、幅広く応用されうることがわかります。
このアドラー心理学の面の拡がりは、書名にアドラーとついていなくても察知することがあります。
その点で、今気になっているのは、発達障害と組織開発。
発達障害はアドラーの器官劣等性、劣等コンプレックスと、組織開発は共同体感覚との結び付きを意識することがかなりあります。
組織開発は、もともと、心理学に興味を持ったきっかけが組織心理学だったので、アドラーを経由して戻ってきたようなものですが、発達障害は今まで触れてこなかったところです。ただ、アドラー心理学から捉えると、発達障害はむしろ、自分自身ともつながっているという思いが強くなってきています。
もちろん、実際に発達障害で苦しまれている方たちが日々感じられている悩みは、私には想像しかできないのですが、支援の手がかりがアドラー心理学にはあるように思われます。
先日も、切符も買えない、バスにも乗れないという話を聞いたばかりなのですが、切符を買う、バスに乗る、それらができるようにする方策がアドラー心理学にはあります。行動療法にもそれはあるのですが、障害を抱えている人へのアプローチは、その人だけではなく、その人を取り巻く人間関係にも働きかけていく必要があり、それをアドラー心理学は示している。
アドラー心理学の拡がりと可能性
アドラー心理学の日本での展開は、「自己啓発の源流」が大勢を占めているのではありません。80年代の頃から子育てなどの分野を中心に、日本各地でサークル活動が行われて来ています。その頃からアドラー心理学に着目されてこられた方は今でも活躍されています。
一般に広く知られるようになったのは、2010年あたりからなのでしょう。「嫌われた勇気」の岸見氏もアドラーカウンセラーの方なので、ある意味、30年近い日本でのアドラー心理学の活動が一気に拡がりを見せたということなのでしょうか? 本屋に行けばアドラー心理学の本は、今でも結構目に付きます。
私がアドラー心理学に興味を持ったのも3年ほど前。ちょうど心理学に興味を持ち始めた頃と重なります。
河合隼雄に学ぶ
フロイトは、アドラーとも、ユングとも比較されているのはよく目にします。
フロイトの精神分析が一般的に浸透しているため、それと比較することで、アドラーの個人心理学も、ユングの分析心理学も、その特徴を理解しやすいということなのだと思うのですが。
フロイトの精神分析も、キャリコンの教科書レベルしか持たない私は、上記のような比較を目にしても、表面的に違いを理解するところでとまっている気がします。
ただ比較するというのは、ほんとうに難しく、たとえば、フロイトの超自我、自我、イドとユングの自己と自我にしても、何を軸にして比較するのかによって、そんなまとまりもつかない気がします。
ところで、アドラーも、ユングも、キャリコンではほとんど取り扱われることはありません。
アドラーは、最近の流行りやサビカスへの注目から多少は目にします。
ユングは、中年期の危機として取り上げられるくらいです。
キャリコンといえば、ハローワークの相談員などをイメージするように、職探しの個人と職業とのマッチング支援というイメージが強いからかもしれません。臨床心理学ではなく、カウンセリング心理学からの働きが強いように見えます。
たとえば、キャリコンの試験で国分康孝は出題されても、河合隼雄は出題されたことがありません。
ただ、サビカスのキャリアカウンセリングやナラティブセラピー、社会構成主義などがキャリコンの中でも話題とされているのを見ると、非常に臨床心理の分野に近づいていっている、そんな気がします。
もちろん、臨床心理といっても、この分野こそ、非常に幅広いのですが、私自身は、今、河合隼雄への関心がとても強くなっています。
河合隼雄は、ユング派の分析家と知られ、心理学から神話、物語と非常に幅広い著述家、特に箱庭療法の普及でも名を馳せていますが、その核は、ユング、フロイト、アドラーと同様、臨床家です。
カウンセリングに関する著作も多く、われわれキャリアコンサルタントにとっても、今でも非常に勉強になります。
クライエントのために何ができるかが臨床家として根本にあり、クライエントとカウンセラーとの関係性を非常に大事に考えた。
関係性を重んじたという点は、ロジャーズもそうです。ロジャーズは必要十分条件としてとてもシンプルにそれを提示した。河合隼雄もそれを評価しています。ただ、それを日本人の場合どうなのかについても考えている。そこがすごいなぁと思います。ユングについてもそうです。つまり、アメリカやヨーロッパで出来上がったものをそのまま、日本人に当てはめようとはしなかった。この点は、非常に大事なことだと思います。
そうした態度を学ぶことはもちろん、河合隼雄が残したものに立ち返ることも、相応に役に立つんじゃないか。そう思います。
物語についても、ナラティブセラピーよりは、私は河合隼雄のほうがしっくりきます。
河合隼雄の「ぼーっと聴く」
聴くということは、非常にスリリングな行為だと、つとに河合隼雄さんは指摘しています。
「死のうと思っています」
そう言われて、「はー」と返す。
ここにはカウンセラーの賭けがある。
患者の可能性に賭けているのだと。
この可能性は、患者の考えていること、感じていることよりも、さらに深いところにある。そのため、患者がことばや態度で表現することにとらわれていてはいけない。
河合先生は、細部にとらわれてはいけないと言われます。
細部にとらわれると、そのひとそのものがわからなくなる。
「ぼーっと聴く」というのは、そのひとの可能性に賭けて、そのひとそのものをわかろうとすることなのでしょう。
ここで、わかるというのは理解するということではなく、感得することだとも言われます。感心する。感激する。
「人の心などわかるはずがない」
そのように河合先生は言い切ってもいるのですが、そこでのわかるは、理解するという意味なのでしょう。
つまり、客観的に観察できる事象から吸い上げて、このひとはこういうひとだと説明可能な言語にする。それを理解するということだとすると、それは分析する、解釈するということでもある。
感得するという意味でのわかるは、そうではなく、たとえば、パッと見てわかる、そういうのに近い。「ユング心理学入門」に書かれている現象学的接近法。
ここで、河合先生が着目しているのは、関係性。そこで、問われているのは、カウンセラー自身が、患者との対話で、何を感じ、何を考えているのか、ということです。つまり、患者がもつ悩みなどに対して、カウンセラーも当事者であることが強調されている。
ひとの悩みを聞いて、
「がんばってください」
というのは、当事者のことばとしてはありえない。
カウンセラーが当事者意識をもつということはどういうことなのか?
たとえば、クライエントもカウンセラーから感じ考える。ふんふんとうなづいているけれど、ビンボーゆすりをしているカウンセラーからクライエントはどんなことを感じるか?
カウンセリングとは、クライエントとカウンセラーの相互作用の営みであって、カウンセラーの一挙手一投足がクライエントに影響を与えている。それ以前に、お互いの存在自体が影響を与え合っている。
この相互作用そのものからはカウンセラーは逃れられない。
そう考えると、当事者意識が問われているというのも、その浅い、深いが問われているのだと思うのです。
木原雅子さんの出張授業
アドラーからロジャーズへ
アドラーは、フロイト、ユングと並び、心理学の三代巨頭と言われたりもします。
ここでいう心理学は臨床心理学のことを指しているんだろうと思います。
臨床心理学の教科書にならえば、フロイトは臨床心理学を切り拓いた先達者であり、その後、精神分析のなかでも様々な流派に分かれたり、そして、精神分析、行動分析とは異なる立場で、ひとの全体性に着目するロジャーズ。
臨床心理学と心理療法の歴史は、フロイトを出発点として、フロイトとの比較で整理されることが割と多いですね。
教科書上では、アドラーの名前はほとんど出てきません。
ただ、ロジャーズ以降の臨床心理学の流れも含めてみると、アドラーの影響は大きい。
論理療法やナラティブアプローチまで、むしろ、アドラーを素地に現在の臨床心理学があるのではないか?とさえ思えてしまう。
アドラーの影響範囲は広いと漠然と考えるのではなく、アドラーの主要な概念を手掛かりとして、臨床心理学あるいは心理療法の歴史を振り返ってみる。そうすると、さまざまな療法家の独自性もよりよく見えるかもしれない。
てなことを考えていくと、私が、まず手始めとして考えたいのは、アドラーとロジャーズの関係です。
アドラーは指示療法、ロジャーズは非指示療法という違いはあるけれど、ひとの見方や実際の活動には似ているところがあります。
ひとの見方ということでは、人間の自発的な成長可能性にアドラーもロジャーズも着目していたという共通点は言えると思います。
アドラーには全体性という概念がありますが、ひとを包括的にみるという考えはロジャーズも持っています。
活動という点で、今、オープンダイアローグが話題になったりしますが、アドラーもロジャーズも、公開性に着目さていた。アドラーはオープンカウンセリングを行い、ロジャーズはエンカウンターグループをやってます。
逐語録の録音、公開もロジャーズが始めた。
アドラーからロジャーズへ、という流れは、これからよりくわしく確認していきたいと考えています。
今になって思う、卒論のこと
大学を卒業してからほぼ半年経ちますが、
一点、やり残した感を感じることがあります。
それが、卒論。
東京未来大学の通信課程は、卒論必須ではありません。
在籍時も、モチベーション行動科学部では卒論をやっているというひとには会ったことがありませんでした。
こども心理のひとからは、何人か、ゼミや卒論の話は聞きましたが。
3年次編入の場合、卒論を書くとすると、1年卒業を伸ばす必要がありました。
入学2年目にゼミに所属し、3年目に卒論を書くということになります。
そのためには入学1年目の途中で、希望を出す必要がありました。それも出さず、そのまま、卒業してしまったわけですが、そのときは、まあ、迷ってしまったんですね。卒論書くということの大変さに。文献を調べ、実験やら、調査やら行い、分析して、研究論文としてまとめるのは、しんどいと思ってしまったのです。
それが今になって、心のこりだと思うのは、研究手法をひと通り教わり、学ぶことは、それこそ、そんな機会は、他ではないということにあらためて気づいたからです。
卒論を書くということは、研究をやる、ということで、データの取り方や調査手法、統計解析など、スキルとして学ぶことが多いのと、それに加え、自身の関心を元に研究テーマを決めていくことで、自分にとっては実りが多いと期待できます。
また、大学の先生から直接、2年間にわたって研究指導が受けられたんですから。
教科書を読み知識を得ることも学びのひとつだとは思うのですが、おとなの学びとしては、得るだけではなく、知識を使う、知識をつくることも学びなんではないかなあと感じます。
特に、心理学は使ってナンボの学問だと思います。
おとなの学びって、なに?
と考えると、
蓄えた知識を使い、実際に使える知識を作り出すというのが、それなんじゃないかなあ?
そのためには、ひと通り、研究手法を経験しておくことで、より学びも深められると思われてきます。
修士へ行くという手もありますが。
キャリアコンサルタント試験に役立つ本
キャリアコンサルティング試験合格に役に立った本をご紹介。
先ずは定番ですが、
この2冊は必読です。試験作成担当者のネタ本ではないかと思うくらい。
これからの試験では、次の本も外せないでしょう。
新時代のキャリアコンサルティング―キャリア理論・カウンセリング理論の現在と未来
- 作者: 労働政策研究研修機構,労働政策研究・研修機構=
- 出版社/メーカー: 労働政策研究研修機構
- 発売日: 2016/08/31
- メディア: 単行本
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上記3冊は、試験に直結するものですが、いきなり読み進めようとするにはハードルがあるなあと感じる場合、キャリアコンサルタントって?というイメージがつかめる本が役に立ちます。それには次の3冊がオススメです。
宮城先生のこの本も定番ですね。
この本を読んでから、木村先生の「理論と実際」に進むのもアリです。
「再考」と書かれていますが、カウンセリングとは? キャリアカウンセリングとは?から、実践や将来ビジョンを考えるにも役立つ本です。
また、キャリア理論をどのように活用するのか、といったことも書かれているので、養成講習で学んだ知識を整理するヒントも得られるのではないかと思います。
金井壽宏先生の編著によるもので15年ほど前の本ですが、様々な論者によるキャリア論は、自分なりに理論を整理するのにとても役に立ちます。
この本で、金井先生は組織開発、トランジション(転機)についてまとめているのですが、「企業内キャリアコンサルタント」への期待が大きいことを考えると、そこにもヒントが隠れていそうです。
働き方改革の担い手「キャリアコンサルタント」自分らしい生き方の支援者
- 作者: 田中稔哉
- 出版社/メーカー: 日本マンパワー出版
- 発売日: 2017/04/06
- メディア: 単行本
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キャリアコンサルタントを受けてみようかと資格取得を考えている人は先ずこの本を紐解いてみるのがオススメです。
キャリアコンサルタントがどんな資格なのか、試験はどんな内容かを余さず把握できます。また、現役コンサルタントのレポートは、イメージを膨らませるのに非常に有益です。
試験の内容に合わせて、情報源(厚労省資料など)が掲載されているのも便利。
キャリアコンサルタントもそうですし、他の資格でもそうですが、この資格をとってどんな仕事をやっていくのか、具体的なイメージを持っておくことは、学習の支えになります。その資格を取得した方たちの語りは、イメージを膨らませるための題材になります。
キャリコンの力 キャリア・コンサルタントの人間力と能力 (Parade books)
- 作者: キャリア・アソシエイツ
- 出版社/メーカー: パレード
- 発売日: 2015/07/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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キャリアカウンセリングとメンタル 心に不安を抱える人へのサポート力向上に (Parade books)
- 作者: 松尾一廣
- 出版社/メーカー: パレード
- 発売日: 2016/11/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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私の場合、松尾さんから影響を受け、自分なりのキャリアコンサルタントのイメージを模索している最中ですが、キャリアコンサルタントって、こんな仕事もするんですね、ということが上記2冊でよく分かります。仕事はお客さん=クライエントがいらっしゃってこそやれる、キャリアコンサルタントだからできるということではないんですね。松尾さんは、目の前のクライエントの問題を解決することを一心に学びを続け、仕事の幅を広げていらっしゃいます。
キャリアコンサルタント試験での実技に役立つ本をいくつか挙げておきます。
傾聴に関する本では、この2冊が定番だと思います。
古宮さんの傾聴に関する本は何冊かありますが、私はこの本が説明が一番シンプルで、またワークブックにもなっているという意味で、とてもいい本だと思います。
東山さんの「聞く技術」も非常に参考になります。
40年近く前の本ですが、有名な「コーヒーカップ方式」はこの本に書かれています。
ここまでは結構、キャリアコンサルタントに関する他のブログでも重複している本が多いと思います。
次の2冊は、あんまり見かけないと思いますが、実は一番学科でも実技でも応用がきく本です。
アドラー本は色々と発刊されていますが、それらの大半は、アドラーを引用しながら自説を展開しているものが多いと私は思っています。もちろん、向後先生の「幸せな劣等感」のように例外もあるのですが、読んでいるとアドラーが言っていることなのか、著者が言っているのかわからなくなることがあります。
アドラーの翻訳も色々ありますが、最も読みやすいのが、この本です。
アドラーがなぜ、応用が効くかというと、キャリア理論でもカウンセリング理論でも、アドラーが言っていることに近いものが多いからです。私は、アドラーを読むことで、いろいろな理論がアドラーに紐づけて整理できました。
河合先生は、他にも「カウンセリングの実際問題」など、カウンセリングに関する本を書かれていますが、私はその中でも、この本が一番参考になりました。簡潔な表現で書かれていますが、実技ではそれが一番役に立ちます。ただ、中身はとても深い。のっけから「他人と分かり合えるはずがない」と言い放たれるところから始まりますが、一方で、「人間は他人との共感を求めずにはいられない」とも先生は指摘します。いきなり、ポーンと投げ出された気分になります。そこにこの本の奥深さがあります。理屈では理解できないところがあります。でも、ひとの心理って理屈じゃないですもんね。
参考にしていただければ幸いです。
心理学検定の申込開始
謙虚なコンサルティング〜真摯な好奇心
謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か
- 作者: エドガー・H・シャイン,金井壽宏,野津智子
- 出版社/メーカー: 英治出版
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