47歳からの心理学学習帖

週末研究者の研究ノート。キャリアカウンセリングを中心に、心理学、社会学などのトピックを取り上げていきます。過去記事には東京未来大学在籍時の学習ノートをそのまま残しています。

心理学の学び方

毎日熱い日が続いていますね。


今週は、スクーリングということで毎日、北千住を経由して堀切まで、朝6時半には家を出て通っています。


大学に来て、授業を受けていると、つくづく、心理学は教科書読んでるだけではダメだなぁと感じます。

心理学は身体で学ぶもんだというのは、東京未来大学に入って教えられたことですが、

本に書いていることをうのみにしないで、試してみる、やってみる、というのがとても大事なことだし、それが一番の学びになると実感します。

知覚心理学認知心理学社会心理学など教科書ではいろいろな実験が取り上げられていますが、あれを丸暗記するレベルだとなんの意味もなく、物知りレベルで終わってしまう。実験して、結果、教科書通りになってもならなくても、そこから次を考える、そこが心理学をやってる最たる学びになるんだろうなと思います。

頭でわかっただけではなく、それを実際に体験することがとても大事なことだと思います。

また、心理学には一定のお作法があって、先ず仮説を立てる、その仮説を統計を使って証明されるかされないかを確認していく手続きを取ります。

これは、ロジカルシンキングのトレーニングになります。

何が問題なのかを設定して、こういう場合にはこうなるはずだという仮説を立てる。それを実験を通して証明していく。その結果に対して考察する。

この一連の流れでは、正しく結果が出るように、いろいろ配慮しないといけないことがあります。

記憶実験でも、日常の言葉を使わないで、ランダムな文字の並びを覚えるってなことをします。言葉は知識や過去の記憶と結びついているので、そうした知識や記憶が実験に影響してしまうのを避けるため。

他にも、実験に参加する人の特性が偏らないようにするとか。人間、年齢を重ねるとどうしても物覚えが鈍くなってきます。なので、記憶実験では、特定の年代に偏らないようにする場合があります。統計的にもそれが望ましいから。

つまり、ある原因に対して、こういう結果になったということを証明したいのですが、他の要因が結果を左右してしまうというのを避けたい。なので、結果に影響しそうなことは予め影響がでないようにしておく必要があるのです。

こういう手続きを考えると、ふだんの仕事って、仮説でしか物事進めていないと実感したりするのですが、やはり、証明はだいじだなと思います。



キャリアコンサルタントにとってカウンセリングは?

キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門

キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門


サイコセラピストも、キャリアコンサルタントもカウンセリングのベースは共通している。そのベースは、ロジャーズの三条件
自己一致、受容、無条件の肯定的配慮。
杉原氏は、臨床心理士だが、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーとの接触も多く、この本ではキャリア相談を例にカウンセリングについて説明されている。
確かに、サイコセラピストとキャリアカウンセラーとのカウンセリングに共通するところはある。だが、それぞれカウンセリングの目的は違うし、求められるものも違うという点についても十分に配慮されている。

キャリアコンサルタントを目指します

キャリアコンサルタント講習に本日申込ました。来年の春受験が目標です。

この資格、今年の4月から国家資格になっていますが、厚労省が認定している講習修了が必須になっていて、15の団体が認定を受けています。それぞれこれまでキャリアカウンセラーなどの民間資格に定評のある団体ですが、これまでの実績と受講場所で、私は選びました。

キャリアコンサルタントを取ろうときめたのは、カウンセリングに関連する資格が欲しいと考えたこと、それとこの資格が国家資格になったということ、ですね。

この1年大学で学んできた中でも、カウンセリングは最も興味のある分野です。また、この資格は現職でも、あるいは退職しても活かせるのではないかという期待。

国は、キャリアコンサルタント10万人計画を立てているのですが、現在、約5万人。なぜ国がキャリアコンサルタントに力を入れているのか、その背景には、人口減少社会で労働者数も減っていること。そこで、一人ひとりの労働生産性をいかに上げていくかという大きな課題があります。

就業人口の減少に対して、1億総活躍と言われるように、女性、高齢者、外国人の労働市場参入を促進し、量的に働く人を増やすという施策も重要ですが、そのためには労働市場の整備と共に、一人ひとりの働き方を支える仕組みが大事になる。その仕組みのひとつがキャリアコンサルタント

特に、企業内でのキャリアコンサルタントはまだまだ少ないと言われています。国は、企業へキャリアコンサルティングの導入を促したいと考えている。この点、今後の企業の動向はしっかりモニタリングしていく必要があるだろうと思います。

アメリカではキャリアカウンセラーという名称が一般的なようですが、日本はキャリアコンサルタントです。どうもカウンセラーだと心理臨床っぽいというのが理由らしい。

でもカウンセリングもやるしアセスメントもやるのはキャリアコンサルタントも、カウンセラーも同じでしょ、と思うのですが、心理臨床とは目的が違うというのをハッキリさせておきたかったんでしょうね。

臨床心理学と独立してカウンセリング心理学が存在するアメリカと異なる日本の事情が考慮されているのでしょう。




持論アプローチという手法

働くみんなのモティベーション論 (NTT出版ライブラリーレゾナント)

働くみんなのモティベーション論 (NTT出版ライブラリーレゾナント)

金井の持論アプローチは、体験してみないとその良さや実践性はわからない。
学術的な本を読むと、その内容を鵜呑みにして、理解したと思ってしまうことがある。だが、それは勘違いしていることが多く、そこで得た知識が使えなければ意味がない。昔はとにかく最初から最後まで読破することに専念したこともあるが、この歳になって、そんな読み方をすることはなくなった。
前にも書いたが、金井のこの本はワークブックなので、とにかく、自分で持論を書いてみないと意味がない。この本は読むというよりは、使う本なのだ。そして、この本で得た自分の持論は、他のモチベーションの本はもちろん、普段の生活にも続いていく。いわば、この手の本は、開かれた本なんです。

働くみんなのモティベーション論

働くみんなのモティベーション論 (NTT出版ライブラリーレゾナント)

働くみんなのモティベーション論 (NTT出版ライブラリーレゾナント)


モティベーションを実践的に考えるための本。
自分で自分のモティベーションをどのように自己管理していくか、あるいはマネージャーとして部下のモティベーションをどのようにマネジメントしていくか、そのための拠り所となる持論を構築するための本。
なので、ただ読めばよいというよりはワークブックに近い。
この性格の本を金井さんは、リーダーシップ、キャリアデザインでも出している。
モティベーション、リーダーシップ、キャリアデザインについて、持論アプローチを提唱しているのは、これらが経営学の組織行動論の中心的トピックスであることもさりながら、組織行動論という分野が実践的な分野だから。
知っているだけではあまり意味がなく、使えないと意味がない。
なので、金井さんの本を読むときは、理解するということ以上に、どう使うかを考えながら読まないといけない。要は、ワークブックやドリルだ思って読むのがいい。


消費者の心理

消費者行動論--マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)

消費者行動論--マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)


消費者行動の心理という科目の教科書。
この科目はモチベーション行動科学部では必須科目。学習の手引きに加え、サブテキストが配付されますが、このサブテキストは教科書のワークブックになっています。そのサブテキストに基づき、レポートを月2回提出します。勿論、テストもあります。

経営系に位置づけられていますが、タイトルに心理とあるように、心理学の応用と考えたほうがいいと思います。認知心理学社会心理学を勉強してから学ぶと、理解しやすい。心理学がどんなふうにマーケティングに使えるかがよくわかります。

それと、消費者心理を学ぶということは、自分の普段の生活を見直すことにつながる。
なぜ、いつも同じ缶コーヒーを買ってしまうのだろうか?とか、なぜ、車にはこだわりを持つのか? など、自分の買い物行動のクセがわかる。これって、結構大事なことだと思います。買い物行動って、実は、自分のライフスタイルを表現してるんですね。

ただ、教科書を漫然と読んでいるだけでは、なかなか自分の生活との関わりと結びつかない。という意味で、この科目のサブテキストの役割は大きい。実際にサブテキストで教科書の要点を把握し、サブテキストの問題を解くことで、自分の生活と心理学の接点を見つけ、気づきが生まれる。

ということで、消費者行動の心理は、非常にやりがいのある科目です。


キャリアコンサルタントの教科書を読む

キャリアコンサルティング 理論と実際 4訂版

キャリアコンサルティング 理論と実際 4訂版


キャリア・コンサルタントではなく、キャリアコンサルタントと呼ぶのが、制度上は正しいようです。
この本を読むと、各章の最初に同様に、キャリアコンサルタントの表記についてコメントがついています。資格制度と関連したキャリアコンサルタントがどういう資格なのか、また職業なのかがよくわかります。

渡辺とハーのキャリアカウンセリング入門で、キャリアカウンセリングは、米国の19世紀末からの経済史、産業の変遷の中で誕生し、発展してきたと記述されています。
同様に、木村氏のこの本からは、キャリアコンサルタントが現在の日本の経済、社会状況から要請されているものだということが良く理解できます。
言い換えれば、キャリアコンサルタントは日本の現在の状況が作り出したのであり、単に米国のキャリアカウンセラーを輸入したものではない、ということです。
つまり、キャリアカウンセラーとキャリアコンサルタントは。むしろ、別ものと考えたほうが良いのかもしれません。
もちろん、キャリアコンサルタントを支える知識は、スーパーやシャイン、ホランドなど米国のキャリア理論も含まれるし、カウンセリングの考え方、進め方もロジャーズに負っているのも事実です。
ただ、それらの理論をどのように使い、実践していくかは状況に左右される部分が大きい。理論にクライエントを当てはめるのではなく、クライエントに即して、理論の取捨選択をしていく必要がある。
心理学でも文化は大きなトピックです。
個人主義集団主義と対比されることもありますが、米国の実験結果が日本でも妥当性を持つのかは試してみないとわからない。
木村氏は、現在、キャリアコンサルティングが日本でどのように実践され、何を期待されているのかを手際良く整理されています。
この点、キャリアコンサルタントへの入り口として、最適な教科書だと思います。

モティベーション論を読む

ワーク・モティベーション

ワーク・モティベーション

科学者=実践家である産業・組織心理学者にとって、モティベーションはパフォーマンスに直結する核となる研究テーマだ。

モティベーションは、ヒトの行動を説明し、予測する概念として、多くの心理学者が取り上げできた、古くて新しいテーマだ。

ヒトを突き動かすのは何なのか?

一方で、ヒトの行動は多様だ。

それだけに、ヒトを突き動かすものが欲求だとしても、その欲求もさまざまある。
マズローは欲求を階層化した仮説を示した。
ハーズバーグは、満足させるもの、不満足を生むものの二つのグルーピングを行った。

数あるモティベーション論は、主に、説明の仕方によって、内容論と過程論に大別できる。マズローやハーズバーグのそれは内容論に属する。

レイサムは、フロイトまで遡り、自身がロックと共に追い続けてきた目標設定論まで、過去100年に渡るモティベーション論をこの本でレビューしている。そのレビューは、産業・組織心理学の歩みでもあり、心理学そのものの歴史でもある。だから、モティベーションもこれまで心理学の厳格な研究手法によって妥当性と信頼性を問われてきたのだとわかるし、また、産業・組織心理学の舞台で、実用性を求められ続けてきたのだとも理解できる。

レイサムによれば、目標設定理論は、バンデューラの社会的認知理論にも近い。両者に共通するのは行動主義をいかに乗り越えるのか、ということであり、行動主義がブラックボックスを置いたところを概念化しようとしたことだろう。
目標は、確かに、仕事についての認知だ。
高い業績は、具体的で困難な業績目標からもたらされることが多い、というのは管理職であればどこかで聞かされたことがあるだろう。
だが、そこには、いくつかの変数が働く。
能力の高低、自己効力感の高低に、具体的で困難な業績目標は左右される。
さらに、具体的で困難な業績目標が高い業績に結びつくためには、戦略が必要だ。
戦略は、目標へ到達するための手順や活用できるリソース、経路を考えて実行することだ。要は、見通しだ。見通しがたてば、あとはやるだけと踏ん切りがつく。
しかし、いつも見通しがつくとは限らないし、むしろ、とりあえずやってみて、その中での気づきから次のステップを決めることが多いかもしれない。その場合のヒントも、目標設定理論に見つけることができる。
確かに、目標設定理論は実践的であり、実用的だ。

ちなみに、この本のなかで、モチベーション行動科学部 角山先生の研究もレビューされています。


キャリアコンサルタントの説明会に行ってきました

国家資格になったキャリアコンサルタントの情報収集のため、養成機関の説明会に参加してきました。

参加者は10人程度。

教務の方の説明を1時間半ほど聞き、その後、その説明者の方と話しました。

国策としてのキャリアコンサルタント10万人計画やセルフキャリアドック、企業内へのキャリアコンサルティングの普及など、なかなか、良い話を聞きました。


資格を取った後の話も、まあまあ、現実味のある話だったので、もし、キャリアコンサルタントの資格を取るなら、ここかなと感じられました。


資格って、取った後の道筋が大事だと考えていて、特に、キャリアコンサルタントは、その核にあるのはカウンセリングなので、スーパーバイズされながら実践を積んでいかないと、どんどんスキルも錆びついていくはずなのです。その点のフォローは、JCDAという協会がやっていくそうです。JCDAは、試験実施機関でもあり、厚労省の委託事業にも絡んでいる機関。


キャリアコンサルタントの取得には、養成機関での受講、試験受験、登録という3つのステップを踏む。

試験は、筆記と実地に分かれていて、実地は論述とロープレ口頭試問が行われる。

養成機関での受講内容は、理論と実践に分かれ、キャリア理論や面談技術を学ぶ。

実地の問題は、技能検定と形式は同じ。論述は逐語録から主訴、見立てを行い、ロープレはクライアントとの関係づくりから主訴の把握、見立て、方策ができるかが問われる。


あと、面白いなと思ったのは、ライフキャリアへの意識は女性のほうが高いらしいです。

出産、育児、介護などライフイベントとの関わりが男より深い、キャリアについても女性のほうが苦労するケースが多いというのがその理由。

男はワークキャリアを考えることは多い。

ただし、ワークキャリアは、終身雇用、年功序列を前提とした考え方で、定年までどういうキャリアパスを社内で辿っていくかを考えるもの。なので、むしろ、現在的な考え方ではない。それに対し、ライフキャリアは一生通じて考えるもの。ライフイベントとの関連や転職、離職も考慮に入れながらキャリアを考えていくもの。女性はこれまでそのようなキャリアを強いられてきたし、その点、経験値もあるということなんでしょうか。


キャリアは、労働法関連の改正もあったり、市場じたいも人手不足と低賃金の話などマクロの動きも流動的な一方、個人にとってもどう自身の生産性を上げていくかがエンプロイヤビリティにも影響するため、今、非常に興味深い。



世襲と格差

ひと昔前に流行った金持ち父さんのメッセージは、お金に働いてもらおう、そのために資産を持とうということだったと記憶しています。

今。議論されている格差社会では、金持ち父さんのメッセージは、確かにすでにある程度の資産を持っている人たちには該当するかもしれないが、資産を持たない人たちにとっては絶望でしかありません。


橘木俊詔さんの世襲格差社会でも、やはり、資産を持っているかいないかが分岐点だと思います。

ただし、ここでの資産は不動産や金融資産だけにとどまらず、カンバン、チバンも含むものです。

医師、政治家、弁護士、農家などの世襲の実態を実証ベースで手際よく分析していく中で、格差は単に再生産されていくだけでなく、より格差を拡大していくのだということを教えられます。その主要工程が教育であるというのは、苅谷剛彦さんの学力と階層にもつながることではあるのですが、前近代では、武士は藩校に通い、町人は寺小屋に通っていたのを思い起こせば、元々教育は階層と密接につながっていたのでした。

戦後、アメリカに追いつけ追い越せという風潮に押され、国家全体で生産性を上げるために、一流大学、一流企業、幸せな生活という神話が形成され、高度経済成長期の増える所得を元手にして、高校、大学の進学率は上がり続けました。

高度経済成長期の神話は、一億総中流神話と共に雲散霧消しましたが、それと同時に、教育制度が持つ階層の再生産という機能がより鮮明に見えてきた、というのは言い過ぎでしょうか?

世襲も教育に支えられているのは、橘木さんの分析から明らかだと思います。

東大生の親も東大出身が多い、慶応出身の子どもも慶応大生が多いんだとすると、予備校に行かず宅浪して東大早稲田を目指すという受験生が懐かしい。漫画にもよく描かれた浪人生も神話のひとつだったのかと感じます。


世襲、階層の固定化。

それがグローバルな現象だとうことも指摘されていますが、日本や韓国の場合、なぜか、前近代に立ち戻るような気がするのですが、それは牽強付会というものでしょうか?


医師の子が医師になる、親の跡を継ぐ。

これって、非難されることでは決してありません。むしろ、当然とも感じられるのですが、他の商売でも代々続くというのは尊敬の念で語られることでもあります。


なぜか?


やはり、日本は儒教の国だからではないのか?

と考えると、格差はグローバルな現象だとは認めつつ、その日本固有のあり方にも視線が注がれる議論もありうるだろうと思います。