47歳からの心理学学習帖

週末研究者の研究ノート。キャリアカウンセリングを中心に、心理学、社会学などのトピックを取り上げていきます。過去記事には東京未来大学在籍時の学習ノートをそのまま残しています。

心理学の学び方

毎日熱い日が続いていますね。


今週は、スクーリングということで毎日、北千住を経由して堀切まで、朝6時半には家を出て通っています。


大学に来て、授業を受けていると、つくづく、心理学は教科書読んでるだけではダメだなぁと感じます。

心理学は身体で学ぶもんだというのは、東京未来大学に入って教えられたことですが、

本に書いていることをうのみにしないで、試してみる、やってみる、というのがとても大事なことだし、それが一番の学びになると実感します。

知覚心理学認知心理学社会心理学など教科書ではいろいろな実験が取り上げられていますが、あれを丸暗記するレベルだとなんの意味もなく、物知りレベルで終わってしまう。実験して、結果、教科書通りになってもならなくても、そこから次を考える、そこが心理学をやってる最たる学びになるんだろうなと思います。

頭でわかっただけではなく、それを実際に体験することがとても大事なことだと思います。

また、心理学には一定のお作法があって、先ず仮説を立てる、その仮説を統計を使って証明されるかされないかを確認していく手続きを取ります。

これは、ロジカルシンキングのトレーニングになります。

何が問題なのかを設定して、こういう場合にはこうなるはずだという仮説を立てる。それを実験を通して証明していく。その結果に対して考察する。

この一連の流れでは、正しく結果が出るように、いろいろ配慮しないといけないことがあります。

記憶実験でも、日常の言葉を使わないで、ランダムな文字の並びを覚えるってなことをします。言葉は知識や過去の記憶と結びついているので、そうした知識や記憶が実験に影響してしまうのを避けるため。

他にも、実験に参加する人の特性が偏らないようにするとか。人間、年齢を重ねるとどうしても物覚えが鈍くなってきます。なので、記憶実験では、特定の年代に偏らないようにする場合があります。統計的にもそれが望ましいから。

つまり、ある原因に対して、こういう結果になったということを証明したいのですが、他の要因が結果を左右してしまうというのを避けたい。なので、結果に影響しそうなことは予め影響がでないようにしておく必要があるのです。

こういう手続きを考えると、ふだんの仕事って、仮説でしか物事進めていないと実感したりするのですが、やはり、証明はだいじだなと思います。



消費者の心理

消費者行動論--マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)

消費者行動論--マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)


消費者行動の心理という科目の教科書。
この科目はモチベーション行動科学部では必須科目。学習の手引きに加え、サブテキストが配付されますが、このサブテキストは教科書のワークブックになっています。そのサブテキストに基づき、レポートを月2回提出します。勿論、テストもあります。

経営系に位置づけられていますが、タイトルに心理とあるように、心理学の応用と考えたほうがいいと思います。認知心理学社会心理学を勉強してから学ぶと、理解しやすい。心理学がどんなふうにマーケティングに使えるかがよくわかります。

それと、消費者心理を学ぶということは、自分の普段の生活を見直すことにつながる。
なぜ、いつも同じ缶コーヒーを買ってしまうのだろうか?とか、なぜ、車にはこだわりを持つのか? など、自分の買い物行動のクセがわかる。これって、結構大事なことだと思います。買い物行動って、実は、自分のライフスタイルを表現してるんですね。

ただ、教科書を漫然と読んでいるだけでは、なかなか自分の生活との関わりと結びつかない。という意味で、この科目のサブテキストの役割は大きい。実際にサブテキストで教科書の要点を把握し、サブテキストの問題を解くことで、自分の生活と心理学の接点を見つけ、気づきが生まれる。

ということで、消費者行動の心理は、非常にやりがいのある科目です。


コーチングの昨今

最近、俄然、コーチングに関心が向いています。

そのため、コーチングに関する本を読み漁ってます。

 

この1冊ですべてわかる コーチングの基本

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  • 作者: コーチ・エィ,鈴木義幸
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2009/08/29
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コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる

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コーチング・バイブル―本質的な変化を呼び起こすコミュニケーション (BEST SOLUTION)

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コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで

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メタ・コーチング

メタ・コーチング

  • 作者: L.マイケル・ホール,ミシェル・デュヴァル,田近秀敏,<,協力>,●泉本行志●稲田隆一●小屋一雄●高野潤一郎●山村佳央,佐藤志緒
  • 出版社/メーカー: ヴォイス
  • 発売日: 2010/08/25
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で、わかってきたのは、コーチングにも、エビデンス・ベースドによるアカウンタビリティが要請されていること、また、ポジティブ心理学のトレンドをモロに受けていること。

オーストラリアのシドニー大学には、コーチング心理学の修士過程が設置されていて、ここでは、コーチングはポイティブ心理学の応用と位置付けられています。

また、ポジティブ心理学の先導者、セリグマン先生がコーチングをポジティブ心理学の実践と位置付けようとしていたようです。

 

これまで、コーチングといえば、「ネイティブ・コーチなど、優秀なコーチの経験を体系化したもの」で、コーチ養成機関で体験的に学ぶものと理解していました。もちろん、コーチングを身につけるには、それも重要な手段だと思います。一方で、コーチングはコミュニケーション・スキルと説明されているとおり、職場で、家庭で、その他人と接する場で実践してこそ意味があるのも確かです。むしろ、そうした実践を欠いた研修には意味ありません。

 

これまで経験的に積み上げられてきた体系が、コーチングの実践家によっても検討され(『コーチングのすべて』、『メタコーチング』)、一方で、ポジティブ心理学からのアプローチも展開されている(コーチング心理学)。

ということは、現在もコーチングは成長、展開しつづけている、ということなのでしょう。

 

ただ、コーチングには、心理学だけでなく、経営学、そのなかでも主に組織行動論ともリンクしています。

 

問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる

問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる

 

 

 

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則

 

 

?神戸大学ビジネススクールで教える?  コーチング・リーダーシップ

?神戸大学ビジネススクールで教える? コーチング・リーダーシップ

 

 

 

コーチングとコーチング心理学

何年か前に、管理職研修として、コーチング研修を受けたことがあります。コーチングとはなんぞやから始まって、一通りの基本的な内容は含まれていましたし、集中研修が終わってからも、電話でのフォローがありました。

実際に、当時のメンバーからの評価、フィードバックがあったりもしました。

管理職研修なので、上司としてのマネジメント力を鍛えるというのが眼目ではあったと思います。

その時の経験がどれくらい、今、身についているのだろうかと振り返ると、正直、よくわかりません。

周りを見ても、マネジメントの上手な人がコーチングを駆使しているのかというと、どうもそうとは思えないということもあります。

そうと思えないというのは、私自身がコーチングというのを今ひとつ実践はおろか、理解すらできていないため、なのかもしれません。

 

コーチングって、なんかうさんくさい・・・と感じたことはないでしょうか?

 

やたらめっぽう「資格」があるし、研修はやたら高いし、自己啓発セミナーのにおいがするし、と、距離を置きたい気になります。

一方で、上記に書いた社内研修での経験からそのスキルじたいは役に立つだろうし、面白いとは認識しています。

ただし、研修での経験があるがゆえに、それ以上、コーチングに触れたいと思うことはこれまでありませんでした。

 

ところで、「コーチング」は大学のホームページにも紹介されていますが、

モチベーション行動科学部の必須科目です。

正直、今さら感がありました。

コーチングって、ビジネススキルでしょ!?

なんで、カリキュラムに入っているのか・・・しかも、必須で。

 

というような、あまりポジティブとはいえないところに、

つい最近出版された「コーチング心理学概論」という本を読みました。

 

率直に、コーチングって面白い。

 

この本を読んでわかりましたが、「うさんくさい」という感じもあながち、間違いではないということがわかりました。

実際、過去の経緯では、自己啓発セミナーの集客コンテンツとして利用されたり、

あるいは、この本ではなく、ネットで検索したら出てきたことですが、マルチ商法のスキルとしても活用されていたようです。

 

それだけに、国際コーチ連盟をはじめ、コーチングに携わる方々による、コーチングについての理解と普及への並々ならぬ努力も、この本から窺うことができました。

 

さらに、コーチングは、優秀なコーチの方々の実践による経験の積み上げであるため、科学的な実証性や理論的な基盤づくりに着手されたのは、21世紀に入ってからのようです。コーチング心理学が体系的に整理されてくるのも、これからのようです。

他にも、心理療法やカウンセリングとの違いやコーチングの核となるスキル、モデル、また、心理学的系譜についても書かれています。

特に、心理学的系譜については、今流行りのアドラーに源流をもとめ、マズロー、ロジャーズと続く、人間性心理学に影響を受けているということ、また、技法についてはエリスの論理療法が取り入れられているという点に興味を持ちました。

しかし、それ以上にポジティブ心理学との関連についての指摘は、個人的には非常に関心を持ちました。

ポジティブ心理学コーチングの理論的・実証的な基盤となりうる。セリグマンが示唆しているようです。

心理療法には臨床心理学があり、カウンセリングにはカウンセリング心理学があるように、コーチングにはコーチング心理学がある。

そして、コーチング心理学がポジティブ心理学と共に、21世紀の心理学の潮流になっていくのかもしれませんね。

 

 

コーチング心理学概論

コーチング心理学概論

 

 

 

 

 

 

心理学の全体観をつかむ

サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)

サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)

心理学は、頭に⚪︎⚪︎とつくものが、とてもたくさんあります。

認知心理学社会心理学、感情心理学、発達心理学、行動心理学、ポジティブ心理学、宗教心理学、交通心理学、産業心理学、組織心理学、感性心理学、教育心理学、乳幼児心理学、青年心理学、まあ、キリがないのでこの辺で。

非常に、研究が具体的で、多岐にわたる一方、なかなか、全体観が掴みにくい。

要は、心理学って、なに?と理解しにくいと以前から感じています。

なので、全体的なイメージを示していただけるのは、非常にありがたい。

心理学なので、こころを研究するものだ、とはいえ、そのこころにどう迫っていくかについては、いろんな立場、考え方があります。

人間の脳ミソの動きを追っていくのか、人間と人間の間で起こることに着目するのか、それとも、こころなんて、目に見えないものを研究するのは科学ではないと言い切り、目に見える行動を追っていくのか、など。


おととい、下條先生のサブリミナルマインドを読んでて、これ、もっと早く読みたかったと感じました。

潜在意識を扱ったものですが、要は、人間の行動は、意識していないものに左右されることが非常に多いということが書かれてます。

といえば、無意識ということばが思いつくのですが、フロイトユングのことが書かれてるのでは全くなく、むしろ、オーソドックスな、心理学の教科書に出てくるような研究例を取り上げながら、人間は、いかに自分が意識せずに行動しているのかが説明されています。

つまり、心理学ってなに?という問いの一つの答えをが提示されているのです。

しかも、簡潔に。

前から気にはしていたものの、もっと前に読んどきたかった本です。



レイサム、ワークモチベーションを読み始める

東京未来大学では教育方針として、科学者=実践家モデルを掲げられています。

これは、臨床心理学に由来を持っているもので、たとえば、東大の下山先生によれば、

「つまり、臨床心理学は、人間行動がどのように維持発展されるかについての科学的探究に関わる科学性と、人間の苦悩を生み出す状況を改善し、問題を解決していく臨床実践に関わる実践性の両者から構成される学問として定義されるのです」(『これからの臨床心理学』、下山晴彦、東京大学出版会)。

下山先生は、米国心理学会での定義を引用し、上記のように紹介されています。

いっぽうで、産業・組織心理学でも、実践と科学を共に追究しようとする先生がいます。

ゲイリー・レイサム先生です。

ワーク・モティベーション

ワーク・モティベーション

 

 本文400ページの大部で、まだ読み始めたばかりですが、冒頭から繰り返し、「実践者、科学者として」という言葉が繰り返し出て来ます。

著者のゲイリー・レイサムは、産業組織心理学の大家で、モチベーションの目標設定理論を提唱した先生。その先生が、研究のフィールドとして実践の場をどれほど重視していたか、また、その問題の解決にいかに意を注いでいたかが伺えます。

たとえば、

「本書全体をつうじて、実践者であり科学者である(逆の順序ではない)私自身に頻繁に言及するが、これはこの仕事についたときから、現実の職場の問題に行動科学の原則を当てはめることに関心をもってきたからだ」(『ワーク・モチベーション』、ゲイリー・レイサム)

 

また、これは邦訳されていないようですが、以下のような著作もあります。

 

Becoming the Evidence-Based Manager: Making the Science of Management Work for You

Becoming the Evidence-Based Manager: Making the Science of Management Work for You

 

 

この、"Evidence-Based" というのが、また、臨床心理学でも使用される用語ですね。

 

 

 

 

 

 

これからの心理統計学習

統計は、今まで、独学で、何度かチャレンジしてきてました。

ファイナンシャルプランナーの金融でも、相関係数、リスクの計測は出てきたし。


今年に入っても、gaccoのデータサイエンス入門、また、いまは統計分析を視聴しています。あと、大学の授業も受講しています。

なんとなく、心理学での統計の使い方がイメージできてきた感じがします。

基本的な用語は、過去、何度か本を読む中で繰り返し確認してきたので知ってはいたものの、今回、大学の授業を受けてみて、やっと腑に落ちてきた。特に、検定について、なんでそんなことするのかが理解できてきました。

ただ、いまの段階は、統計のホンの入り口にすぎないので、ここからどう進めるか?


統計は、使われる分野で、ポイントの置き方が違うよなと感じます。

当然、教科書も様々あり、金融と心理学とてでは違うし、数学としての統計学はもっと理論的です。

数式の多い、少ないというのもありますし、数式が出てこないからといって、説明が優しいかというとそうでもない。


今は、心理統計を中心に置きつつ、定評のある教科書を読み進めようと考えているのと、Rという統計ソフトの使い方も覚えていこうと思います。

数学も自習が必要ですね。


数学は、忘れてるとか以前なので。




脳の活性化

今日はノー残業デーなので、定時退社して、メディア授業を視聴。トータル10回のうち、残り3回の2回を見終わりました。

後、1回視聴で、一通り見たことになります。

メディア授業は、各回に確認テストがあります。

単位取得には、動画全回の視聴と確認テストをすべて合格すること。そして、最終テストに合格しないといけません。

内容は、統計ですが演習が多く、動画の合間に、問題を解き、また動画で答え合わせするのが割と中心になります。

難しい数式はこの授業では出てこないので、その分、気楽です。

統計も、簿記と同じで、手を動かしながら、覚えるものですね。

本を一通り読んだだけでは理解は難しく、自分で、手続きを踏んで、自分で計算しながら身につけていくものだと感じます。


演習って、大事だよなぁと、この年になって実感します。


仕事の場面だと、簿記は会計ソフトが自動的に帳簿も、試算表も、決算書の他、原価計算の類もやってくれます。

統計も、データの作成から平均値や標準偏差などの統計量はExcelかやってくれるし、RやSPSSなどのソフトを使えば、各種検定も、分散分析もやってくれるのでしょうね。

ただ、ソフトに従い手順通りデータを入力したところが、アウトプットについて、きちんと説明できるか、あるいは、アウトプットから何らかの気づきが得られるのかは、やはり、簿記でも統計でも、ベースとなる知識があるのかないのかによって、随分違うと思います。

会計ソフトが、統計ソフトがやってくれるのは、煩雑になりがちな作業を効率良くやってくれるというだけのことです。

ソフトを使っての結果をどう活用できるか、それが本来の仕事だと思います。

そこに、会計なり、統計なりのベースの知識が必要とされてくる。そして、その知識習得に演習は不可欠、ということです。


年食ってくると、頭の回転がにぶくなったり、記憶力が落ちたり、視力も落ちると公然と耳にしたり、自分でも年齢のせいにしていることもありますが、最近、感じるのは、それって、ただ、自分で手を動かすことが少ないだけだからではないのかということです。


ひところ、脳を鍛える類のゲームが流行っていたことがありますが、やはり、一定の効果はあるのでしょう。漢字の書き取りや計算問題などもやってると、眠っていた記憶が活性化してくることは、簡単に実感できます。

小学生高学年のドリルをやってると、最初は、これってなんだっけ?という文章題も、何問か解いているうちに、苦もなく、解けるようになります。

しかし、そういう試みをしないと、記憶は眠ったままです。


後、脳が活性化してくると、他の記憶も活性化してくるというのも確かなんではなかろうか。


なかなか、小学生のドリルだと抵抗があるという方には、次の本はおすすめです。

速読トレーニング―すぐに役立つ実践10ステップ (ブルーバックス)

速読トレーニング―すぐに役立つ実践10ステップ (ブルーバックス)


計算力を強くする―状況判断力と決断力を磨くために (ブルーバックス)

計算力を強くする―状況判断力と決断力を磨くために (ブルーバックス)


40歳を越えると、本当に、脳の活性化は課題です。
物事の見通しがつくぶん、往々にして、いつも似たような判断や行動しかしていない、とすると、脳の使い方も一定のパターンに収まってしまっているかもしれません。

行動のバターンを変えてみることが、脳の活性化につながる、というのも確かでしょう。
すぐできる、簡単にできることから始めて、自分で効果が実感できるようになると、しめたものです。

大人の学習観

前々回、前回と資格の勉強にまつわる話を書きました。簿記と行政書士を受けたのは、彼此、20年ほど前になります。なので、出願内容についてはあまり触れませんでしたが、宣言的記憶や手続き的記憶を意識すると、よりその試験にあった学習方法をすすめていくことができるのではないかと思います。

資格を取ろうとしたときに、独学、あるいは学校に通う、通信を受けるなど、取得の筋道がかんがえられますが、安易に学校に通えば資格が取れるのかというと必ずしもそうではないことは、周知の事実かと思います。

モチベーションを高め、かつ、その状態で維持し続けられるかは、独学だろうが、学校に通おうが、課題であることは変わりません。また、あの講師の指導に任せておけば良い、あの先生の言うことさえ聴いていれば必ず受かるというのも、怪しいと感じてしまいます。


テレビでもお馴染みの植木理恵さんに、学習観についての論文があります。

10年近く前の論文ですが、心理学研究として、実証的に分析がされています。研究対象は、高校生ではあるものの、資格取得を目指す方にとっても参考になるものです。

この論文では、学習観として、方略志向、学習量志向、環境志向の3つについて説明されています。

一番わかりやすいのは、学習量志向です。とにかく、時間を費やす、本を何回も繰り返して読むなど、勉強は物量勝負ですすめていくタイプ。

環境志向は、例えば、あの塾は優秀な生徒が揃っているから、進路指導に定評があるからなど、要は、最適な環境が整っている学校に行けば、自分も試験に合格すると考えるタイプ。

資格取得の話でいくと、実は、この環境志向が非常に問題になるケースが多いのではないかと踏んでいます。

資格取得は、資格学校によるマーケティングの色合いが強い。

資格は武器になる、資格を強みに新しいキャリアが開ける、これからは◯◯だから、それにはこの資格が有利など、このマーケティングでは、宣伝コピーは、20年以上前から変わりません。

無論、結局は、学校側も実績がものをいうのは承知なので、合格へのサポートは懸命に行ってくれるでしょう。しかし、学校のサポートはそこまでです。何を言いたいかというと、宣伝コピーを間に受ける人もそんなにはいないと思ってますが、合格後、学校が独立開業や就職斡旋をサポートしてくれるはずはありません。

資格は、試験に合格すれば仕事がついてくるわけではないのです。資格で仕事をしていくには、おそらく、試験勉強とは違った努力が必要です。学校は、合格させるのがビジネスであって、それが彼らの実績につながり、企業としての成長につながっていくのです。

学校によっては、合格後のサポートもしていきますよというところもあるのかもしれませんが。

環境志向からやや話が逸れたかもしれません。合格後のサポートは行き過ぎた議論かもしれませんが、合格までの学習という場面でも、学校任せの学習は、リスクがあると思っています。

実際には、自分が、学習に充てられる時間や学習スタイル、それまでの経験、知識、また、学校の雰囲気が、まったく、自分とは合わないと感じていながら、でも、実績のある学校だからと通い続けているケースもあるんじゃないかと思います。

また、学校のカリキュラム通り学習し、その学校の模擬試験では、いつも合格確率90パーセント以上だったのにも関わらす、本番の試験では、まるで歯が立たなかったというエピソードも、いくつも転がっているはずです。

特に、合格率一桁台の試験は、ある部分、確率が働くものです。なので、模擬試験はあまり良くなかったが合格する人も中にはいるのです。

環境志向が危険だなと思うのは、特に、試験後です。

この学校を信じて勉強してきたのに、この先生だからこそ合格できると信じていたのに、結果、翌年また頑張ろうという気にもなれず、下手に自信をなくし、それが仕事や生活にも影響がでてくるようになると本末転倒です。


学習を通じてなにを目指すのか、先ず、それをとことん考えることによって、より良い学習観が持てるのではないかと思います。

行政書士〜効果的な記憶を使った学習方法

前回、簿記の勉強の仕方を書きましたので、今度は、行政書士の勉強の仕方を書きます。

行政書士は、昔、運転免許センターへ行くとその近所に軒を並べていたものですが、今はすっかりそのような景色はなくなりました。

行政書士は、弁護士などと並ぶ公的資格で、法律系の資格になります。

その名の通り、行政法が範囲に含まれますが、民法も出願されます。

私が受けた20年前は、小論文、一般常識といった出願もありました。

前回、簿記は、身体で覚えるものだというよなことを書きましたが、行政書士は、心理学でいうところの宣言的記憶を使う試験です。

つまり、教科書を読んで、その理解の深さが大事だと思います。

ただ、教科書もやみくもに、5回、10回読めば理解は深まるかというと、それはあまり得策ではないと思います。

記憶は、まず覚えるという行為があり、それを覚えているという状態があります。そして、必要なとき、それをきちんと思い出せること。覚えているかどうかは、実際には、必要なとき思い出せるかの時点でないと、わからない。

とすると、この思い出す機会がないと、ちゃんと記憶しているのかどうかはわからないということです。

それを確認するツールのひとつが、問題集ですよね。ただ、問題集というのは、解いて、答え合わせして、と、その繰り返しだけではもったいない。

正誤問題なら、謝りの選択肢もどこが誤りなのか、チェックする。

空欄補充問題なら、キーワードのつながりをまとまりとして覚えておくなど、インプットにも活用すると、より効果的な学習につながると思います。

教科書への書き込みをする人もいると思いますが、問題集の解説欄への書き込みも有効です。特に、キーワードの抜き書きだけでも、後でざっと確認するときなどにも役立ちます。

問題集は、過去問をまとめているケースも多いので、出願形式に慣れやすいという利点もあります。この効果は大きいと思います。

さて、行政書士試験は、宣言的記憶を使うという話、ここでは、スキーマスクリプトが大事なんではないかと思っています。

法律の条文は、ざっくりと、用語の意味を押さえるものと、手続きの流れを理解するものとがあります。

用語の意味とは、不法行為や債権譲渡など、法律の言葉を正確に説明できるようになること。

手続きの流れの理解は、誰が、いつまでに、どんな手続きをするのか、申請書は誰に提出するのか、誰が審査をするのかを理解し、説明できるようにすること。

まとめ方としては、用語はマインドマップを使い、手続きはフローチャートを使って整理していくのがいいのではないかと思います。

日商簿記〜慣れ優先の学習方法

心理学では、宣言的記憶、手続き的記憶などの記憶の分類があります。

宣言的記憶とは概念的な知識、手続き的記憶は自転車の乗り方など、身体で覚える類いの知識のようです。

この二つは、学びを始めるにあたって、ヒントになりえます。

そこで、私事ながら、自分の経験を例に考えたいと思います。

まずは、簿記です。

結論から言うと、3級、2級あたりまでは、簿記は、手続き的知識の典型だと思います。

つまり、覚えるよりは慣れろ、というのが最適な学習法なのではないか。

簿記は、学習した方はご存知でしょうが、この場合にはこうするという処理の仕方が問われるものです。

仕訳や試算表作成、決算処理など、手続きの正確さと速さが問われるので、教科書を何度も読むというよりは、問題集を電卓叩きながら何問解いたかが重要です。

貸倒引当金の意味を知っているだけでは点数は取れません。その仕訳が出来て点数につながります。

簿記の良さは、手続きのルールが決まっていて、また、表のフォーマットも決まっているため、それらルールに則って処理ができるかどうかの試験です。問題を解きながら覚える。さらに電卓を叩きながら、解答のスピードを上げていく。頭で覚えるよりは手で覚える。自転車の乗り方を覚えるのと似て、手続き的記憶の学習法が適している。

ただし、その学習法は、2級までは通用するのですが、1級になると、効率が悪い面が出てきます。

会計学なるものが出てくるからです。

これは、体系的な理屈の話なので、その体系を理解し、説明できるようにする必要がある。2級までは、出された問題の処理が合っていれば良かったが、1級では、◯◯を説明しろという問題が出てくる。

ある意味、会計学が1級の鬼門だと思いますが、ここは学習法を切り替えないといけない。

会計学は、もう一つの宣言的記憶に属するものです。なので、慣れではなく、理解を深める学習法を取らないといけない。

知識の関連づけが重要になります。


心理学でいう記憶の分類は、他にも、作業記憶やエピソード記憶などもあるのですが、学習法を考えるのに、とても役立つという話ですが、要は、今から学ぶことは、どの記憶を使えばいいのかによって、それにあった学習法を選んだ方が、楽ということです。

参考までに、高校生向けではあるのですが、勉強する社会人にとっても、非常にためになる2冊を紹介しておきます。


勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)


勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書)

勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書)


出題形式が学習方法を決める

教育心理学に学習方略という言葉が出てきます。学習スキルや勉強方法に近い言葉なのですが、方略は、ストラテジー、つまり、戦略です。

さて、この議論の中に、学習者は、出題に合わせた学習方略を選択するという論点があります。

出題形式には、穴埋め、選択、並び替えや正誤問題、何々について◯◯字以内で述べよといった論述問題があります。

また、出題される問題には、ある程度、偏りがあるのが普通です。レベルもそうですが、毎回必ず出題される分野があったり、ほとんど出題されない分野があったり。

それに合った学習を行うというのは、至極、当然に思います。

試験で評価されるのだとわかっているのであれば、いかに点数をとるかに重点を置き、出題形式に合わせた学習を行うのは正攻法です。

高校や大学入試だけでなく、資格試験でも同じですね。

特に、社会人が資格を取ろうというときに、時間のやりくりは、大きなポイントになります。できるだけ時間を割いて、勉強に集中しようとしても、仕事を抱え、付き合いもあり、家族サービスもしないといけないとなると、どれだけの時間を勉強に当てられるのかの見積もりは非常に大事です。

一般に、◯◯の資格を取るには、最低、これくらいの学習時間が必要だと言われたりします。それも、目安にはなると思いますが、個人によって違いはあるでしょう。

自分の経験が活かせるかどうかによっても、有利不利は変わります。

例えば、ファイナンシャルプランナーという資格があります。ファイナンシャルというだけあって、やはり、銀行、保険、証券などの金融系の方が多く取得されています。会社から取れと言われることもあるでしょうが、出題内容もやはり、金融系の方には有利なのです。普段扱ってる商品だったり、業界内資格とも重複していたりするのですから。

かといって、金融系の仕事をしていないと取れない資格なのかというとそうでもありません。ファイナンシャルプランナーの取得方法については、また、あらためて書きたいと思います。

限られた時間の中で、成果を出すために、必要なのが戦略であり、方略です。

方略は、上記の経験の他、目標、動機付け、環境などを考慮に入れないといけません。

目標は、何のために学習するのか、あるいは、資格を目指すのかによって変わります。例えば、その資格を取って独立するんだという場合と、脳の劣化を防ぐとでは、学習する対象も、中身も違うでしょうし、動機付けの種類も変わってきます。

動機付けには、内発的動機、外発的動機の他、さまざまな理論が提唱されていますが、ここでは、学習を持続していく力と単純に考えておきましょう。

環境には、例えば、仕事であったり、職場やプライベートの人間関係、家族関係、また、学習以外での個人的課題などさまざまあります。

これらを全て考慮に入れながら、最適解を出すのは、なかなか、一人でやりきれるのか、やったとして、それが果たして正解なのかと不安にならないか?

そのために、人は相談するのでしょう。

あるいはググる




ロジカルシンキングの学術的根拠?

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いっとき、マッキンゼー出身者の方々によるビジネススキル系統の本を読みまくっていた時期がありました。

かれこれ10年ほど前になりますでしょうか。

例えば、こういう本。


マッキンゼー式 世界最強の仕事術 (ソフトバンク文庫)

マッキンゼー式 世界最強の仕事術 (ソフトバンク文庫)

マッキンゼー流図解の技術

マッキンゼー流図解の技術


考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

定番と言えば定番だと思いますが、何でこんなことを書いているかと言うと、心理学の教科書にデジャブに近い記述がいろいろとあるからです。
例えば、マジカルナンバー7。
認知心理学で出てくるのですが、今はちょっと探せないですが、上記の本のどこかに書かれていたはず。
あらためてビジネススキルと認知心理学との関連を調べてみるのも面白いかもなという思いつきだけなんですが、認知心理学という心理学の基礎分野であっても実用性はあるよねと思います。
例えば、パワポの資料を作るときとか。
視覚研究から近接、類同などという原理がありますが、これなんかもどういう見せ方をするかを考えるときの材料になりそうです。


ビリギャルから引き出す受験勉強の教訓

ビリギャルは、学習塾のプロモーション事例だと書きました。

 

amq87.hatenablog.com

 今回は、いったん、マーケティングから離れて、受験勉強のスタイルとして、ビリギャルから何を引き出せるのかをまとめてみたいと思います。

 

 Kindle版もあったのか、気づかんかった・・・

 

前にも書きましたが、この本を読んだからといって、高校生が偏差値を40上げるのは難しいと思います。もちろんこの本にも単語の暗記の仕方や歴史の勉強法、小論文対策などが書かれてはいますが、いずれも参考にはなるというレベルで、書かれていることをそのまま、実行しようとするとすぐに難題にぶつかるはずです。それは当たり前で、この本に書かれている勉強法は、さやかさんという学習者の知識レベル、学習意欲、興味・関心などをつぶさに観察した結果、指導者がさやかさん個人に対して行った実践だから。見方を変えれば、さやかさん以外の他の人に対しては、指導者も別の指導を取っているだろうということです。

個別指導は学習者に寄り添う形で行われる指導であり、指導者は先ず、学習者から信頼されないことには成り立たないものだというのは容易に理解できます。この関係性が築けないことには、塾という商売は成り立たないでしょう。

「あの先生、教え方、下手なんだよね〜。なにいってっか、全然わかんねえし。プリントばっかりやらせてさあ、解き方、全然教えてくれないんだよね」と、子ども同士でLINEなんかで流された日には、すぐに広がって、保護者にも伝わり、教室には生徒誰一人いなくなるという事態に陥るんでしょう。

と考えると、塾経営者も人気商売なのだなあと察せられます。しかも、いつ、お払い箱にされるかもわからない、常に、喉元にナイフを突きつけられている状況なのかもしれません。

LINEでネガティブなコメントを流されないためには、生徒一人ひとりときちんと向き合っていく必要があるのだと思います。

ビリギャルの巻末に、著者の坪田氏が、「性格&指導法の判定」を載せているのも、このことと無関係ではないでしょう。

偏差値を上げていく指導には、単に、生徒の「できる」、「できない」ではなく、「できない」要因を、本人の性格や興味、関心、家族の状況、友人関係、学校での様子といった、本人の生活全体をアセスメントしていく必要がある。そのアセスメントを通じて、本人に最適な指導法を行うことが求められる。カウンセリングに近いのかもしれません。

ビリギャルは、そう考えると、個別指導の実践報告です。そのため、高校生にとっては、この本を読んだだけで偏差値40も上がらないのです。

一方、個別指導の実践報告として読んでいくと、この本は「受験勉強」に対してのイメージを少なくとも突き崩していくことになるのではないかという感じがします。

「受験勉強」と聞くと、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか?

例えば、受験に失敗したという場合、その失敗の責任は誰にあるのでしょうか?

あるいは、「受験勉強」は、「勉強」とは何が違うんでしょうか?

私自身、大学受験は20数年前の昔の話であり「共通一次」の時代です。スマホSNSもインターネットもなかった時代。受験勉強で言えば、偏差値全盛のころです。受験情報といえば、旺文社の「蛍雪時代」という雑誌くらいのものでした。

自分が通う高校で、だいたい受験する大学の偏差値のゾーンも決まっていました。偏差値の低い高校に通っている人間が、早稲田慶応を受けるなんて言おうものなら、それこそ、「身の程知らず」扱いです。

しかし、その頃から、「偏差値の低い高校から東大行った」、「学年ビリからがんばって早稲田に合格した」という話はあったのです。そこで強調されていたのは、「1日どれくらい勉強しているか」や「脇目もふらず、いかに勉強に集中したか」といった、勉強に対するストイックさです。修行僧に近いイメージがありました。英単語を覚えるために、辞書を1ページ1ページ読んでは食べるという人間もいたほどです。

そんな経験から私が持っている受験勉強のイメージは「自分自身との戦い」というものでした。その戦いには、ストイックさと切り離せません。もちろん、塾や予備校もありましたが、「講義」スタイルが中心で、講師の話を聞き、それを理解し、模試を受け、自分の順位を偏差値で確かめ、合格可能性の判定を確認するためのものでした。

「ビリギャル」で描かれている状況とは、まったく違います。

「ビリギャル」の受験勉強は、むしろ、チームスポーツに近いんではないかと思えてくるのです。

さやかさんがプレーヤだとして、彼女のサポート役はコーチとしての学習塾講師だけでなく、母親、友人がいます。遊び先のカラオケ店でも勉強していたというのは、信じられないエピソードではありますが、そのエピソードを通じても、友人たちがいかにさやかさんに好意的であったかが現れています。

1日15時間勉強するのは、相当、高いモチベーションでないと無理です。あるいはモチベーションが高いとしても、友人からの遊びの誘惑はなかなか打ち克ち難いものです。それがビリギャルでは、友人たちがさやかさんが勉強を続けられるような環境を整える役割を果たしている。

母親、友人たちの役回りも、塾講師の役割と同等かそれ以上に、注目されてよいでしょう。さやかさん自身の自分自身との戦いも随所にありつつ、偏差値40上げるためには、どれほど周りのサポートが大きな力を持つか。ビリギャルで、注目すべきはこの点だと思います。

受験や勉強というと、どうしても、「教師」と「生徒」との関係を中心に考えてしまいがちですが、もっと広く、人間関係や状況も含めて考えていく必要があるんだなと思います。そこまで含めて個別指導が行われていたのだとすると、繰り返しになりますが、やはり、ビリギャルはレアケースにあたるんでしょうね。

ビリギャルという特殊事例だけでは、マーケティングとしてはやはり足りない。

著者の坪田氏には、ビリギャルやその他の事例を貫通する、一般化された指導法を提示していくことが、次に必要だと思います。


そしてDVD発売。

本も累計120万部以上。

このあと、どういう坪田氏の展開となるのか?

注目しましょう。

ビリギャルー塾経営のマーケティングの成功

「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」が、文庫本で出版されていたので、読みました。

 

 

映画のプロモーションを兼ねての文庫本なのでしょうが、すでに60万部を売り上げた単行本から受験メソッド、巻末付録が削除されたものになります。

すぐ読めるし、面白い内容だというのが率直な感想です。

ただ、この本を読んで、偏差値があがるかというと当然そんなはずはないと思います。

著者いわく、心理学を応用した勉強法が随所に盛り込まれてはいますが、おそらく、すでに偏差値の高い高校生にとっては、すでに知っていることが多いのではないでしょうか?一方、これから勉強をしようと考えている高校生にとってみると、なかなか実行は難しいのではないか。

とすると、やはり、そこには、良き導き手としての指導者の役割が強調されます。

「ダメな指導者がいるだけなのです」というこの本のメッセージは、だから、よい指導者のいる著者が経営する塾に来なさいというように聞こえます。単行本がベストセラーとなり、今売り出し中の若手女優を主演に映画化もされましたが、それらの現象すべては、とどのつまり、「著者の経営する塾に行こう。行けば偏差値を上げられるよ」というメッセージに収斂します。これが、著者の意図したマーケティングなのかどうかは、私はわかりませんし、著者のシナリオどおりなのかどうかもあまり関心はありません。また、この現象によって、実際に、著者の経営する塾に、生徒が殺到しているのかも知りませんが、おそらく、プロモーション(広く、世間に、知ってもらうという意味で)は成功だと思います。ただし、ビジネスとしてどうなのかは、きちんと調べないといけないですが。